ハノイから車で30分ほど走ると、緑の水田地帯から突然、山積になった焼き物が目に飛び込んでくる。そこがもう、ベトナム陶器の里であるバッチャン村の入口だ。ここは、今も2,000人ほどの村人の大半が陶器作りに携わる村。もともとは中国からつたえられたという、日本でも16世紀後半、安土桃山時代に千利休などの茶人によって「安南焼」としてもてはやされた焼き物の故郷だ。のびやかな藍で描かれた染付やシックな青磁、素朴な白磁、ピュアな赤絵。純朴でやさしく、ぬくもりあふれるこの村の焼き物である。バッチャン村は30分もあれば一周できる。村の道の両側には窯元直営の店やレンガ作りの窯が立ち並び、藁に包まれた製品を自転車に積み込んだ男たちがひっきりなしに行き交う。家族経営の小さな工房では、少女たちが真剣な眼差しで絵付けしている。一つ一つ丁寧に絵付けした器を、レンガの窯で数日間かけてじっくり焼くのだという。そう聞いて、改めて器をみると、たしかに色も文様もほんの少しずつ異なる。ますますいとおしく思えてくる。